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エディブルガーデン、アメリカでは特にここ20年程よく聞くようになった表現ですが、意味は食べられる植物を植えたガーデンのこと。ですから、それがハーブ類だったり、野菜だったり、果物だったり、と内容は色々、とにかく食材になるものをガーデン体裁で植えると、そんな風に呼ばれるようです。カリフォルニアワインの産地として知られるナパヴァレーに、COPIA: The American Center for Wine, Food, & the Artsというユニ
ークな施設があり、その中に16世紀にできたフランスの有名なガーデンの様式にならってデザインされた、かなりの規模のエディブルガーデンがあるというので、ちょっと脚を伸ばして訪問してみました。
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COPIA: The American Center for Wine, Food & the Artsという長ったらしい名前のお陰で
、何となく内容が窺えますが、これは日本でもよく知られているモンダヴィ・ワイナリーの創設者ロバート・モンダヴィ氏のヴィジョンと、創設資金の面でも、彼自身の私財からされた多額な寄付がもととなって実現した、ワインと食、それにまつわる文化を奨励する為に作られた非営利の施設です。モンダヴィ氏は最近94才で亡くなりましたが、カリフォルニアワインを大量生産の安価なワインのイメージから、自らのワイナリーで高品質のプリミアムワイン作りに邁進しただけでなく、視野を大きく持ったマーケティングにも力を注いで、カリフォルニア産ワインを世界に通じるものと評判を高めた功労者としても知られ、ナパヴァレーでもっとも敬愛されていたワイン界の長老でした。
私は、幸運にも何度かインタヴューする機会に恵まれて、直接お話しを伺ったことがあるのですが、もう何年も前になる最後のインタヴューで、モンダヴィ氏はこのコピアの構想を熱心に語ってくれたのが印象に残っています。ワインと食は切っても切り離せないもの、そしてそれらから生まれる文化、関連する芸術を探索し、文字通り美味しい生活をする喜びを分かち合いたい、というコンセプトが元となって、体験し、学び、何かしら素敵なものを発見できる施設が企画されました。そうして出来上がったコピアでは、エディブルガーデンだけでなく、ワインの試飲、料理のデモンストレーション、料理とワインの合わせ方の手ほどきとデモンストレーション、ワインのブレンド方法の講義、その他にも文化的な催しとして様々なコンサートなども頻繁に開催される他、並みのワインショップでは手に入らない素晴らしいワインも取り揃えたギフトショップ、エディブルガーデンで収穫される作物やハーブなどを食材にした本格的なレストランやカジュアルなキャフェも設置された、モンダヴィ氏が思い描いたとおりのワインと食と芸術をテーマにした多彩な文化施設となりました。
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さて、そのコピアの敷地内にあるエディブルガーデンは3.5エイカーという広大なもの。日が強くなり始めた6月初めの日曜に訪れたところ、折よくヴォランティアのガイドによるガーデンの案内トュアが始まるというので参加してみました。参加者は12−3人程集まったでしょうか、ちょっとしたグループです。つばの大きな麦わら帽子に短パン、こんがり日に焼けた肌の色、ガーデニングの専門家と見受けるガイドさんが、トュアの最初に、参加者のみんなにどこから来たか質問すると、遠くはニュージーランド、アイルランド、ドイツ、またアメリカ国内ではフロリダ、といった遠距離組と、サンフランシスコやパロアルトなど、近辺からやってきた人たちと半々くらいのようでした。ちなみに、ナパを含む北カリフォルニアのワインカントリーは、アメリカの観光地の中では、常にディズニーワールドやヨセミテなどと集客人数のトップ争いをしていると言われていますが、このような所に来ると米語のアクセントも西海岸だけのものではないし、様々な外国語や外国語訛りの英語が聞けるので、本当に色々な所から人が来ていることが体感できます。ガイドさんのもう1つの質問は、皆さんガードナーですか、ということ。ガーデニングの経験豊富な人、という質問では遠慮がちに2−3人の手が上がり、時間がある時に庭いじりをする程度と言うと、半分以上の人の手があがりました。成る程、こういうところにやって来るのは、やっぱり物見遊山だけのツーリストではないようです。ガーデンを見るのが好きな人、という質問はなかったので、残念ながら私は手をあげる機会はありませんでしたが。
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3.5エイカーというのは約1万4000平米ですから、相当な広さです。モデルになった16世紀のフランス庭園というのはJardins de Villandryという、ロワール地方に今で
もある有名なお城と庭園とのことですが、インスピレーションとなったのは碁盤の目のように四角い区画に区切っていくフォーマルガーデンの様式で、コピアではこの碁盤型の区分けをスペース構成の基本としたとのことです。もちろん、ガーデンの中身は食用植物なので、フランスのフォーマルガーデンとは全く様を異にします、という付け加えもありました。コピアのガーデンでは、有機農法と生物力学的(バイオダイナミック)な手入れの仕方がされているので、化学肥料や殺虫剤、除草剤などの農薬は一切使わず、そういった自然農法を奨励する為の手ほどきも、堆肥づくりのボックスをデモンストレーション用に設置したりと、色々な方法で提示されていました。ここで栽培されている植物は3つの用途に分けられていて、1つはジュリアズキッチンというコピアに併設されているカリフォルニア・フレンチ料理のレンストランの食材となる、ハーブ、野菜、果物などの実用作物の栽培、2つめは実験的に育てる植物の栽培、3つめはナパが気候的に地中海気候の北端になることもあって、新しい交配品種の種を採集する為の栽培、とのことでした。
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ヴォランティアとのことでしたから、別にこれを仕事にしているのではないのでしょうが、ガイドさんの話しはとてもおもしろく、コピアで育てられている植物の説明やガーデニングにまつわる話しだけではなく、この地方の歴史や、植物や食べ物に関するおもしろネタなど多彩で、30分ほどのトュアでしたが、とても楽しめるものでした。
彼の話しによると、このナパのあたりにヨーロッパの移民が最初にやってきたのは1820年頃、そのほとんどがイタリア人で、その人たちは野菜や果物を作ってサンフランシスコに出荷する近郊農業を営なんだとのこと。ナパというとワイン、ぶどう造りという印象ですが、実際はナパでワイン造りの為のぶどうが栽培され始めたのは、ヨーロッパからの移民がこの地に落ち着いて随分経った1880年代が最初、それもとても小規模なものだったそうです。しかも1920年代に禁酒法が施行されている間は商業栽培ができなかったので非常な艱難期、その後禁酒法が廃止されてから元気を取り戻したものの、本格的に躍進しだしたのは60年代になってからと言いますから、それからのナパワインの飛躍、特に質的な向上は目覚ましいものがあります。
こちらで時折聞く『世紀の対決』と呼ばれた有名なエピソードはその躍進を示すものですが、それは1976年に、フランスのワイン界の大御所達を集め、フランスワインとアメリカワインを対決させる目隠し試飲コンテストがパリで開催された時の話しです。それらのお偉方達が、この優雅さ、品格、繊細さ、味わいの深さ、これこそ最高のフランスワインの極致とトップの座を与えたのは、赤のキャベルネ・ソーヴィニョンも、白のシャルドネもナパ産のワインだったのです。何しろ審査員は全員フランス人、それもフランスワイン醸造学研究所の所長だの、グロン・クル(フランスワインの一番高いランク)協会の会長だのと、錚々たるメンバーだったので、アメリカ人にとっては笑いの止まらないハッピーモーメントでした。今まで大して意に介されていなかったアメリカワインに対する認識を一新したのですから。一方、フランスでは、この結果はちょっとしたアクシデントでは、と言う意見も出て、翌1977年にも同様にフランス人だけの審査員によって目隠し試飲会が開催されたところ、結果はやはり同じ。面目を失ったフランス側は意気消沈したのか、ダメージコントロールの必要を感じてか、はたまた自尊心が許さなかったのか、理由はともかく、それ以後目隠しコンテストは開催されませんでした。
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話しが少しそれてしまいました、コピアのエディブルガーデンに戻りましょう。ガイドさんの説明は栽培している植物のハイライトトュアともいうべきもので、珍しいもの、新種、あるいはとても古い品種なので現在では珍しくなったものなど、話題のある植物の前で止まって、それぞれの特徴や歴史、食べ方などを説明してくれます。マイアーレモンというちょっと甘みのあるレモンがあるのですが(レモンスカッシュなどに最適!)、もともと中国でみかんとレモンを交配して作られたことや、鉢植えで充分フルーツがとれることだの、へーえ、そうだったの、と知っているとなんとなく嬉しくなる情報もたくさん教えてくれるのです。葉っぱをちぎったり、ちょうど咲き頃の食用の花や熟れ始めたフルーツなどをとって、においをかいでみて、とか、食べてみて、と実物を皆に廻してくれ、ポットマリゴールドの花びらはサラダに入れると良いだの、ボラージの葉っぱはきゅうりに味が似ているだの、ブルーがきれいな花はさっと天ぷらにしても美味しいだの、実際に役立つ情報もたくさんもらってしまいました。
このガーデントュアは、お天気が良い時は毎日午前11時半から12時までと、午後1
時15分から45分までの2回開催されています。さて、最後になりましたが、もしサンフランシスコに来られるなど、コピアに行ってみたいと思われる方は詳しい情報はウェブサイトでご覧下さい。URLはhttp://www.copia.orgです。入場料は無料、ただし特別なイヴェントがある場合、そのイヴェント参加はその時々で参加料金のある場合有り。基本的には毎日オープンで、休館はアメリカの主要な祭日である感謝祭、クリスマスの前日とクリスマス、元日のみ。サンフランシスコから行く場合は、ナパヴァレーの南端にあるので、所要時間1時間余り、ぶどう畑を縫ってのどかな風景の楽しめるドライヴです。
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